日本における相続の概要

 

 

1 法定相続について〜遺言がない場合に対する基本的な定め

1) 相続人

日本にいる家族が亡くなったとき、海外在住者は相続できるのか?

また、相続については、誰と話し合えばよいのか?

@配偶者相続人

=有効に婚姻の届出がなされている夫婦関係における被相続人の夫・妻

A血族相続人

第一順位:子(代襲相続人である孫・曾孫を含む)

第二順位:直系尊属

第三順位:兄弟姉妹(代襲相続人である甥・姪を含む)

 

※代襲相続

=相続人である子が、@相続開始以前に死亡したとき、A相続欠格に該当して相続権を失ったとき、B廃除によって相続権を失ったときに、その者の子がその者に代わって相続するという制度

 

2) 相続分

自分が相続人となった場合、どの程度、財産を譲り受けるのか?

また、相続人の中に、亡くなった方から、自宅の購入資金を出してもらう等の特別の援助を受けた人がいる場合や、長期間にわたって無償で家業を手伝う等の貢献をした人・長年にわたって亡くなった方の日常生活の面倒をみた人がいる場合は、どのように考えればよいのか?

@法定相続分

@)配偶者と子が相続人である場合

 配偶者が2分の1、子が2分の1(S56.1.1以降)

A)配偶者と直系尊属が相続人である場合

 配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1(S56.1.1以降)

B)配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

 配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(S56.1.1以降)

 

A特別受益の持戻(法定相続分の修正)

共同相続人の中に被相続人から特別受益を受けたものがいる場合に

@)この特別受益を相続財産額に加算して「みなし相続財産」としたうえで各相続人の相続分を確定し

A)そのうえで、特別受益を受けた相続人についてその特別受益額を一応の相続分から控除し、残額をもってこの者の具体的相続分とする制度

つまり、相続財産の前渡しを受けたものとして、その特別受益者が実際に取得する財産を減らす制度

※特別受益

=遺贈、結婚や養子縁組のための贈与(持参金、支度金等)、生計の資本としての贈与(住宅所得時の頭金、特別高等教育資金等)

 

B寄与分(法定相続分の修正)

共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によって、被相続人の財産を維持・増加することに特別の寄与をした者がいる場合に、その寄与分を金銭的に評価し、これを相続財産から控除したものを相続財産とみなし、このみなし相続財産を基礎として各相続人の相続分を算定しようとする制度

※特別の寄与

=被相続人との身分関係において通常期待される貢献の程度を超えるもの

 

3) 相続・遺産分割の対象となる財産

実際には、どのような財産がどのように処理されるのか?

@不動産(土地・建物)

遺産分割後、その旨の登記を行うことが多い。

A金銭債権(預金債権、貸付金債権等)

銀行実務上、共同相続人の一人が自己の相続分に相当する額の払い戻し請求をしても応じてくれないので、遺産分割後、払戻しを行うことになる。

B現金

遺産分割が行われるまでは、その保管者に対して相続分に応じた金員の支払いを請求することはできない。

C賃借権(借地権、借家権等)

多くの判例は、借家権も相続により相続人に承継されるとしている。

D金銭債務

原則として相続の対象となり、相続分に応じて分割され、各相続人が負担することになる。

E生命保険金

通常、相続財産ではなく受取人固有の権利として取得される(→生命保険契約の効果として保険金請求権を取得する)と解されている。

F死亡退職金

支給規定があり、受給権者が明確に定められている場合は、相続財産ではなく固有の権利として取得するものと考えられている。

G祭祀財産(系譜、祭具、墳墓)

相続財産ではなく遺産分割の対象とならず、祭祀主宰者が承継する。

 

4) 遺産分割

遺産分割協議は、どのように行えばよいのか?電話やメールで行ってもよいのか?

戸籍謄本や印鑑証明書が要求された場合、どうすればよいのか?

遺産分割調停は、どのように進められるのか?

 

@協議分割・調停分割・審判分割

相続財産をどのように分けるかは共同相続人間の話し合い(分割協議)で決めるが、共同相続人間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に対して、調停・審判を申し立てることができる。

 

A相続財産の評価

評価の基準時

→実務上、分割時を基準として相続財産の評価することが多い

評価方法

→金銭評価(不特定多数の私人間の自由な取引が行われるとしたら成立するであろう値段)

《入手の容易な参考資料》

土 地:公示地価、基準地標準価格、相続税の評価、固定資産税評価額

借地権:更地価格の50〜90%、路線価図における借地権割合

建 物:固定資産税評価額

 

2 遺言

相続があったら、まず、遺言の有無を確認する必要がある。

公正証書遺言の場合、日本公証人連合会による遺言検索システムがある。

1) 遺言の種類

普通方式  ;自筆証書遺言

=遺言者が遺言書の本文・日付・指名を自分で書き(自書)、押印して作成する方法

;公正証書遺言

=遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方法

;秘密証書遺言

=遺言者が遺言内容と氏名を自書して捺印した書面を封筒に入れ封印したものを公証人に遺言書であることを証明してもらう方法

特別方式  ;危急時遺言

;隔絶地遺言

 

2) 遺言事項

遺言として法的効力が生ずるものは、法律で定められている。

例)遺贈、遺産分割の方法の指定、遺言執行者の指定、祖先の祭祀主宰者の指定等

 

※遺贈

=被相続人が遺言によって他人(受遺者)に自己の財産を与える処分行為

※死因贈与契約

=贈与者の死亡によって効力が生ずる贈与契約

 

3) 検認手続

遺言者が死亡したときは、遺言者から遺言書を預かっている人や遺言書を発見した相続人は、その遺言書を家庭裁判所に提出して、検認の手続をしなければならない(公正証書遺言の場合は不要)。

 

※検認手続

=相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続

 

4) 遺言の効力

遺言は、遺言者の死亡の時から、その効力を生じる。

※遺言が無効とされる場合

@要式の不備

A遺言能力(自分の行為の結果を判断できる能力)がない場合

B錯誤による場合

C公序良俗違反の場合

 

3 遺留分

他の相続人にすべての財産を譲るといった内容の遺言があった場合、その遺言にしたがう必要があるのか?

 

被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分(贈与・遺贈)に対して制限が加えられている持分的利益のことをいう。

遺留分権利者→兄弟姉妹以外の相続人

遺留分の割合→相続人が直系尊属のみの場合は3分の1、その他の場合は2分の1。これを法定相続分にしたがって分割したものが相続人個人の遺留分となる。

 

4 相続放棄・承認

多額の債務がある場合に相続を拒否することはできるか?

 

相続人には、被相続人の権利義務を承継するのかあるいは拒否するのかについて選択権がある。

1)相続放棄

=相続による権利義務の承継を拒否すること

※三ヶ月の熟慮期間内に家庭裁判所への申述を要する

 

2)承認

@単純承認

=全面的に被相続人の権利義務の承継を認めること

※法律上、一定の事由があれば単純承認をしたものとみなされる(法定単純承認)

A限定承認

=被相続人の債務は相続によって得た財産を限度としてのみ責任を負い、相続人の固有財産をもっては責任を負わないとすること

  三ヶ月の熟慮期間内に家庭裁判所への申述を要する(共同相続人が全員共同で行う必要あり)

 

 

成年後見制度の概要

 

1 成年後見制度

ある人の判断能力が精神上の障害により不十分な場合(認知症,知的障害,精神障害など)に、その人を法律的に保護するための制度

※戸籍への記載の代わりに、法務局に後見登記という登録が行われる。

 

1)後見

本人の判断能力が全くない場合について,申立てによって,家庭裁判所が「後見開始の審判」をして,本人を援助する人として成年後見人を選任する制度

※後見が開始すると、本人は印鑑登録が抹消され、選挙権を失う。また、医師,税理士等の資格や,会社役員の地位を失う。

 

成年後見人の職務

本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、必要な代理行為を行い、財産を適正に管理すること

定期的に家庭裁判所に行った職務内容を報告するとともに、必要に応じて家庭裁判所や成年後見監督人の監督を受ける。

 

2)保佐

本人の判断能力が著しく不十分な場合に、申立てによって,家庭裁判所が「保佐開始の審判」をして,本人を援助する人として保佐人を選任する制度

※保佐が開始すると、本人は医師,税理士等の資格や,会社役員の地位を失う。

 

保佐人の職務

本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人が一定の重要な行為をしようとすることに同意したり,本人が保佐人の同意を得ないで既にしてしまった行為を取り消したり追認したりすること

また、予め本人が望んだ一定の事柄について,家庭裁判所の審判によって,代理権が与えられる。

定期的に家庭裁判所に行った職務内容を報告するとともに、必要に応じて家庭裁判所や保佐監督人の監督を受ける。

 

3)補助

本人の判断能力が不十分な場合に,申立てによって,家庭裁判所が「補助開始の審判」をして,本人を援助する人として補助人を選任する制度

補助の制度を利用する場合,その申立てと一緒に,同意権付与の申立て・代理権付与の申立てをする必要がある。

 

補助人の職務

本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人が望む一定の事柄について,本人に対して同意を与えたり,本人に不利益な行為を取り消したり、本人を代理すること

定期的に家庭裁判所に行った職務内容を報告するとともに、必要に応じて家庭裁判所や補助監督人の監督を受ける。

 

4)手続の流れ

 

    家庭裁判所に対する申立て

   

    申立人および成年後見人等候補者からの事情聴取

   

    *判断能力の鑑定

    *親族への意向照会

    *本人調査

   

    審理

   

    審判

※申立てをすることができる人

→本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市区町村長、検察官

※鑑定

=本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定をするための手続

後見開始及び保佐開始の審判では,原則として,この鑑定手続が必要

 

5)後見等監督

後見等監督

成年後見人等が選任されると、家庭裁判所は成年後見人等に対して、一定期間ごとに報告書等を求める。

家庭裁判所の許可を要する行為

@居住用不動産の処分許可の申立て

A特別代理人選任の申立て

B報酬付与の申立て

 

2 任意後見制度

十分な判断能力がある者が,将来判断能力が不十分になった場合に備えてあらかじめ公正証書で任意後見契約を結んでおき,判断能力が不十分になったときに,その契約にもとづいて任意後見人が本人を援助する制度

※任意後見契約を結ぶときは、必ず公正証書で行わなければならない(「任意後見契約に関する法律」)。

※契約は,家庭裁判所が「任意後見監督人選任の審判」をしたときから,その効力が生ずる。

※公正証書により任意後見契約を結ぶと、誰が誰にどんな代理権を与えたかという契約内容が、公証人の嘱託により登記される。

 

 

 

 

 

 

 

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【参考URL

法令データ提供システム(http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi

最高裁判所(http://courtdomino2.courts.go.jp/home.nsf/topframe?OpenFrameSet

法務省(http://www.moj.go.jp/MINJI/

日本公証人連合会(http://www.koshonin.gr.jp/

日本弁護士連合会(http://www.nichibenren.or.jp/

法務局(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/

国税庁(http://www.nta.go.jp/index.htm

土地総合情報ライブラリー(http://www.tochi.nla.go.jp/